Home

2001/01/09 Tue 曇 やや寒 「コーヒー」


昨日バイトから帰ってきたのが深夜1:30で、寝たのは2:30くらいですが、今日は朝6:00には起きて浜松6:55発の列車で東向きにゴゴーゴー。熱海で乗り継いで東京着は11:11。いつも通り。今日はどこへ行こうかなと思案したところ、以前「サイゾー」内のHanaoで紹介されて一度行こうと思っていたコーヒーショップにまだ行っていなかったことを思い出し、そこへ行くことに。

というわけで神田駅で降りて、神田錦町の「JIRO'S CAFE」へやってきました。「営業中」の札を確認してドアを開けると、狭い店内には中には客はおろかマスターもいません。中に入ると「はーい、どうぞー」という声と共に、奥からマスターの川名氏が出てきました。おお、確かにサイゾーに載っていた通りの方です。私を見るなり「お客さん……ですよね?」と訪ねられました。取材か何かと勘違いされたのかもしれません。ハイと答えてカウンターの席に着きます。「ご注文は?」そんな、メニューもないのにコーヒーの銘柄なんて分かりませんよ。「えーと……」「ブレンドでよろしいですか」「お願いします」

缶から豆をスプーンですくってミルにかけ、それを折り目をつけたペーパーフィルターに入れます。ペーパーを陶製のドリッパーにセットしてサーバの上に乗せます。そして、ヤカンからお湯をポットに移し、静かに湯を注いでいきます。なんだ、特別な装置は何もなくて、基本的には私の淹れ方と同じじゃないですか。しかし、ひとつひとつの手つきを見るにつけ、ペーパーの中の豆をトントンと揃える動作でさえこりゃ私には真似できないと思いましたね。ドリッパーに注がれる湯なんて糸のようでしたよ。それにしてもマスターは終始神妙な顔つきで、軽い気持ちで一杯飲みに来てしまった私なんて完全に場違いのような気が。

最後に、ドリップが終わって抽出液がたまったサーバーを直接コンロにかけ、煮立つ寸前で火から上げてカップに注ぎます。このまま無言でいただいて帰るのも何なので、出されたコーヒーに口をつける前に「あのー、以前『サイゾー』という雑誌に載っていたのを拝見して来たのですけど」と言うと、お堅く見えたマスターは一転気さくになって「ああそれでわざわざ。ありがとうございます。そういえば昨日テレビの収録があってね」「テレビですか」「日本テレビの深夜にやってるやつで、ネプチューンが司会しているやつなんだけど、来月それに私がコーヒーの先生とかいって出るんだよ」「ほぉー、すごいですね」「その日本テレビも何でオレのこと知ったかっていうと、やっぱ『サイゾー』見たって」「ハハハハ」

そしてついにコーヒーをいただきます。……すごくサッパリしてますよ。もっとこうなんか特別な超ゴージャスな味でもするのかと思っていたら。しかし全然薄くなくてちゃんと味がある。でも口に苦さがほとんど残らないという。「どうです?」「すごくあっさりしてますね、意外です」「でしょ、これが本当のコーヒーなんだってのが私の持論です」「自分で淹れてみるとただ薄いだけで」「コーヒー淹れるのは簡単そうに見えて難しいよ。ここまでちゃんと淹れられる人はいないよ。プロでもいない」「はぁー。チェーン店のコーヒーなんかだともっと強い味がしますよね」「あれは要するにコクを出しているんじゃなくて、ただ豆をガンガンに深く焼いて、味のあるように思わせているだけ。途中で水飲まなきゃまともに飲めないでしょ」「言われてみれば確かにそうですね。半分飲むとそれからは苦いだけで」

「東京なんかスターバックスの独り勝ちだからね。私だって本当は350円とか安く売りたい(JIRO'S CAFEは一杯600円)けど、これはちゃんといろいろ理由があってこの値段じゃないと売れないんだよ、それでも全然儲からないんだよ」「スターバックス、学生の就職したい企業ランキングの上位にも入ってるみたいですからね」「本当かい! 全く何考えてんだろうね今の学生は」「すいません(笑)」「あああなたも学生さんか(笑)。みんなスターバックス入って何やるのかね、店長になってコーヒー売るの?」「ですかねぇ」「まぁ、あれはあれでいいんだけどね、仮に就職するくらいならいいんじゃない、何年か。でもあんなところにいても……」「コーヒーの勉強にはならないんじゃ」「そう、何にもならないよ。私に言わせればチェーン店のコーヒーなんてのはカスだからね! カス以外の何物でもない」「カス(笑)!」「人待ちとかでどうしてもああいう店に入らなきゃならないときはそりゃあるけど、注文するけど私は一切口つけませんから」「注文はするんですね」「そりゃまぁそこにいるんだからね。でもあんなの飲んでたらホント身体壊すよ。コーヒーは悪いやつは本当に害毒だからね」

「サイゾーの人も変わった人でねぇ、自分でここを見つけて、変わったコーヒーがあるっていうことで」「ああーそういう経緯で」「有名な人も載ってるんで、私なんかが載るのはどうかとは思ったんだけどね。でも、載せてくれって自ら売り込みに来る人もいるみたいだよ。でも『それは編集部が決めることだから』って全部断っているそうだけどね。それにしてもネプチューンってのはひどいね、あれは3日やったらやめられないよ」「どういうことです?」「ホントあんなの芸人じゃないね。遊びの延長だよ。いつから日本の芸人は遊んでメシ喰えるようになったんだ! オレも最初はまじめに教えようと思ってたけど、半分からはもうイヤになっちゃって、あいつらのノリで遊んでやっちゃったよ。だからプロの(コーヒーショップの)人とかが番組見たら怒るかもしれないね、何だあいつはって。でも向こうがそんな感じだからしょうがないよ」

「実は今日静岡から来たんです。東京にはよく来てるんですけど」「静岡! よくこんなとこ分かったねぇ」「サイゾーに住所載ってたんで、地図見るのは得意なんで」「東京はたまにくるのがいいところだよ。住むもんじゃないな。こんなとこに住むのは昔から東京にいる人だけでいいんだよ。それじゃああなたは実家から学校へ通ってるの」「いえ、実家は名古屋のほうでして」「名古屋か、昔一度しか行ったことないけど、何か閑散としていて寂しいところだったねぇ」「そりゃ東京と比べたら(笑)」

「そういえば静岡といえば、藤枝ってところは今どうなんだい」「静岡市のベッドタウンですからね、今県内でも一番まともに発展しているくらいのところじゃないですか」「そうか、昔は本当に草ボーボーで何もないところだった。いや、サイゾーにもあったけど、私は昔保険屋の営業をしていましてね」「はい、書いてありましたね」「それで年に2回くらい藤枝の中外製薬の工場に営業に行ってたんだけどね、仕事が終わった帰りに向こうの人と、まぁどっかで一杯やるかといってタクシーに乗って。それでニヤニヤしながら『面白いお店があるよ』って言うんで、何だいそりゃ、オバサンとかじゃないだろうなって言ったら『中学生だ』って。あんな田舎で中学生が!」「うわー、今だったらとんでもない話ですね(笑)」「いやもちろんオレそのときは遠慮しといたよ(笑)」


……って感じでとても話好きのマスターで、私なんて口ベタな人間なのにカウンターで2時間近くも話していましたよ。その間に10人少々のお客さんが出入りしましたが、マスターによると「いつもこんなんだと思わないでよ。不景気になってほんとお客さんは激減したね。しかし不景気だからってリストラとかそういう形ばっかりアメリカの真似しちゃあいかん。アメリカの奴らなんて人間が汚いから。ここは日本なんだからアメリカの真似する必要はないんだよ」とのこと。このJIRO'S CAFEは本当にコーヒー一筋。喫茶・軽食の店ではなくて、本当にコーヒーだけ。これでよくやっていけると思いますよ。本当にうまいコーヒーを伝えたいというまさにその一心だけ。「サイゾーにもちゃんと書いてもらったけど、それじゃなきゃこんな儲からないことやってられないよ」

いやー素晴らしいお店でした。もうこれだけで今回のお上りには満足してしまったくらいですよ。よく見てみると、この神田界隈ってものすごくコーヒーショップが多いのです。でもこんな、本当にコーヒー一本でやっているお店は、見た限りではどこにもありせんでした。チェーン店ではなくてこぢんまりとやっているところもあるのですが、そういうところもマスターに言わせれば「雰囲気を売っているだけで、コーヒーで勝負していない」と。JIRO'S CAFEでは音楽さえかかっていませんでしたからね。ヤカンのカタカタカタという音だけで。さすがサイゾーがとりあげるだけあって貴重なお店です。一応紹介しておきますと、「JIRO'S CAFE」は神田錦町3丁目15、行き方は、神田駅西口を出てそのままずっと西へ歩いていくという具合ですかね。日曜祝日(土曜も?)はお休みなのでご注意を。

神田の「天下一品」でラーメンライス(670円 tax inclusive)を食して、あと今日は秋葉原でひとつふたつ買い物でもするつもりだったのですけど、秋葉原だからといって安いこともなく、結局サイフを開く気にはならず。秋葉原って品揃えはダントツですが必ずしも価格の面では優位ではないような気が。それより今日もう少しで購入しそうになってしまったのはカシオの電波時計です。腕時計タイプのものがついに去年カシオからも出たのですが実物を見ると物欲が物々といや沸々と沸き上がってきて危険でした。9800円で日本標準時を常時携帯できるのなら安いわな。いやマジでほしいですよ。

ソフマップのアウトレット専門店で見ていたらレジのほうで何やらもめているようでしばらく聞いていたらそのうち店員のほうがどなり始めました。見てみると、客のほうは片言の日本語を話す黒人で、注文したものが個数通りに届いていないということを必至に説明している様子。それに対して店員は「何度言ったら分かるんですか! うちにはないって言ってるでしょ! ないものはない! 発送した!」と、日本人のお客さんに話すときより早口になって、客に向かって怒鳴りつけています。

それに対して「でもね、もう1個あるはずのモニタが……」と客が反論しようとすると「ちょっと口を挟まないで! 最後まで言うこと聞いて!」と無理矢理黙らせ、おいおいお前こそ客に最後までしゃべらせろよ、っていうかふつう客が何かしゃべろうとしてそれを制止するなんて、商売人だったら天地がひっくり返ってもできるようなことじゃないですよ。おまけに相手は日本語が不自由な外国人なのだから、そんなに早口でまくしたてたところで聞き取れないかもしれないし、大声で怒鳴りつけるなんてこれ脅迫の一種じゃないですか。

このお客さんがどれだけ聞き分けなくてダダこねているのかは分かりませんが、店員のほうがカッとなったところで解決するもんじゃないでしょう。まぁここまで自分の仕事に自信持って「オレは発送したんだ絶対間違いない、お前が間違っている」と言えるなんて、それはそれで大したものかもしれませんが。配送のトラブルなら運送会社に電話して伝票の照会をしてもらうとかすればいいのに。少なくとも、今後極力ソフマップでは物を買いたくない、と思ったのは確かですね。元々ソフマップの対応にはあまりいい話を聞きませんし。物が特別安けりゃ接客も安くてかまいませんが、そういうわけでもないし。図体でかいだけで接客がボロボロってのは名古屋の「グッドウィル」にも言えることか。

そんなわけで、今日はせっかく前半マターリといい気分だったのに後半ソフマップのせいでブチ壊しの上京でありました。夜行を使わずに浜松へ帰ることのできる最終列車、東京7:50発快速小田原行に乗車して、小田原、熱海で乗り換えて浜松へ帰還。雨降ってるのにカサ持ってきてないし。ベタベタになって帰宅。


前日へ 翌日へ 今月の目次へ 1999年の同日へ 2000年の同日へ

Home