Home

2000/05/23 Tue 晴 暑 「覚悟」


昨日もなんだかんだで寝たのは4:30くらいで、起きたのは10:00で飯喰ってバイト先へ。軌道に乗っているのだか乗っていないのだかまだあまりハッキリしない番組ですが、徐々にリアクションは向上している模様。昼過ぎまで続いて、一旦うちへ帰って、たまりにたまっている洗濯物を洗濯したり。脱水完了した衣類を干すヒマもなく浜松駅へ。

今日は、先月鈴木みそ氏に引き続き、雑誌「Hippon SUPER!」(誌の資料はこちらなど)関係者の野安ゆきお氏を浜松へお迎えします。シナリオ論等で見られるようにそのライティングスキルは他のゲームライターと一線を画する、いわばカリスマゲームライターとお会いするということで私もやや緊張気味。

で、浜松駅新幹線口でお出迎え。ん、何かイメージとだいぶ違いますねぇ。Hippon誌上で写真を少し拝見したくらいしかなかったのですが、もっとイカツイ感じの人かと思っていました。声を聞くともっと意外で、図太い声アンド重たい感じでしゃへるのを予想していたのですが、トークも軽い感じで。私はHippon読者のとき、野安氏に対して一体どんなイメージを持っていたのでしょう? 自分でも分からなくなりましたが、まぁ何だか面白そうだからいいや。

タクシーで学校へ移動し、我らが情報社会演習室へご案内して、さて何の話題から社会学的議論の定石「The zudahn(ザ・ツダン)」を開始しようかという具合ですが、カリスマゲームライターをお迎えしての話ということで、テーマは自然と「ゲームライター論」に。「当時はマリオがクリアできる25歳がいなかったから、その気になりゃ誰でもゲームライターになれた」という、どのくらいその言葉を額面通りに受け取ってよいのか分かりませんが、とにかく牧歌的時代の話から。

で、やっぱりあるのが、若いライターの逃亡。なぜ逃げてしまうかというと、彼らにとっては、締切というものが人生初の「追いつめられ経験」なのだと。特にゲームライター志望の人間の中には、それまで恋愛とか人間関係とかでの「追いつめられ経験」がない人がいるようで。だから、「覚悟する」という概念が頭の中にない、仕事に対して「覚悟」的なものを持つことができない、っていうかそれまでの人生で「覚悟」を求められたことがなかったわけです。で、逃げちゃうと。

じゃあ彼らにとって「覚悟」とは何だったのかというと、それはゲームの中で擬似的に与えられるものだったわけで。というのも、ゲームに限らず娯楽というものは、「覚悟」言い換えれば「試練」というものを擬似的に与えることで受け手を面白がらせているわけで、本当にゲームだけをしていたら現実の「覚悟」経験がなくなるのは必然かもしれない、というような話で室内はヒートアップしていったり。

あと、ゲームに限らずこのデジタルメディア業界(?)でライターやっていくなら、本能的な新し物好きでないときついという。この業界では3年前はノスタルジーに過ぎないわけです。昨日の自分と今日の自分は違うのだから、昔を語っちゃいけない。例えばゲームの場合「ファイナルファンタジーは3のあたりまでが良くて」などと言い始めてしまったら、その時点でもうダメですなと。言い換えれば、とにかく「今が楽しくてしょうがない」人間じゃないと、イキのいい原稿は書けませんぜと。

そんなこんなで、夕方になってからは学校近くのウナギ屋へ場所を移し、ますます濃厚な議論が繰り広げられます。やっぱり、(一定水準の量カウンタ回そうと思って)Web書くなら作者パーソナリティさらけ出しでいく「覚悟」がなきゃ、とか、英語って本当はいらないスキルなんじゃないか、とか、「赤信号みんなで渡れば怖くない」の「みんな」とは何人以上なのか、とか、等々。で、私は勢いで2200円もする定食を注文したり。普段ケチなくせに見栄は張りたがるというのは名古屋人の血でしょうか。

さらに、夜9:00ごろからはオークラアクトシティホテル浜松のラウンジへ場所を移し、カリスマゲームライター野安氏を囲んで、カリスマ大学教員カリスマ大学院生カリスマ準文化系少女・カリスマ情報学部生(←わし)という我が研究室カリスマ精鋭部隊による本質論に入ります。飲み物が高くなっただけですがね。

でも飲み物が高くなった分話の内容も高尚になってきて、私の力では消化しきれない部分も出てきたりしたのですが、やっぱり本物のカリスマは違うわけで、ライティングの方法論を、まさに「論」として理路整然と示されると、ハハーッと恐れ入るしかないわけです。表現者になるには「覚悟」が必要というわけです。一方で、得意技の「根拠のない自信」を全面肯定され、結局は恐れ入るどころかムチャクチャ気楽になっていたり。でもこれで根拠のない自信に根拠ができたということですか。ちなみにカリスマ大学教員はこれまで壁にブチ当たったことがなかったそうですが、ここへ来て始めて壁というものを実感されたようで。

野安氏の口からポロリと出た「横浜FC昇格決定なら10月にゴチ」という言葉をメモしつつ、そろそろ会合もお開きとなります。などといいながら本日の飲み代もゴチになってしまって。でも、本当にいろいろ、自分にとってドキッとするような話も聞けて今日は実に有意義でした。なぜかHippon読者時代に少し抱いていたネガティブイメージも解消され、いや、野安ゆきお氏は本当にいい人でした! 真のカリスマ、ここにまた一人見つけたり。


前日へ 翌日へ 今月の目次へ 去年の同日へ

Home